2026.01.26 MON

デザイナーが語る、六本木の飲食店内装デザイン ― アンティーク調和空間をつくる設計と素材選定 ―

デザイナーが語る、六本木で“時間が積み重なる飲食店内装”のつくり方

― アンティーク調×和の空間が、なぜ人を惹きつけ続けるのか ―

六本木・港区といった都心の繁華街で飲食店を開業・出店する際、
多くの経営者が悩むのが「どんな内装にすれば選ばれるのか」という点ではないでしょうか。

SNS映えする派手なデザイン、
トレンドを詰め込んだ内装、
とにかくコストを抑えたつくり。

選択肢は数多くありますが、
長く愛され、通い続けてもらえる店を目指すのであれば、
それらとは少し違う視点が必要になります。

今回ご紹介するのは、
六本木にオープンした飲食店「坐離宮 六本木店」の内装づくりを通して見えてきた、
“時間が積み重なる空間”をどうつくるかという考え方です。

本記事では、
この空間デザインを手がけた
デザイナー・小嶋 健志郎の言葉を交えながら、
飲食店内装において本当に重要なポイントを掘り下げていきます。


六本木という立地で、なぜ「アンティーク調の和」だったのか

坐離宮は、福岡県に本店を構える
カレー鍋・とろろ鍋を看板メニューとする飲食店です。

福岡本店は、
古民家を改装したアンティーク調のしつらえが特徴で、
時がゆっくりと流れるようなノスタルジックな空間に魅了されたファンが、
何度も足を運ぶ名店として知られています。

その2号店として計画されたのが、
この六本木店でした。

ただし、条件は大きく異なります。

福岡本店は「古民家」。
一方、六本木店は「新築RC造ビルの一室」。

この相反する条件の中で、
どのようにして“坐離宮らしさ”を表現するのか。

ここに、今回の内装デザインの最大の難しさがありました。


デザイナー・小嶋 健志郎が語る、空間づくりの出発点

本プロジェクトの空間デザインを手がけたのは、
デザイナー・小嶋 健志郎です。

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小嶋は、本件について次のように語っています。

坐離宮 六本木は、
福岡県にあるカレー鍋ととろろ鍋のお店の2号店である。

福岡本店は古民家を改装したアンティーク調のしつらえをしており、
時がゆっくりと流れるノスタルジックな空間に魅せられたファンが
脚繁く通う名店である。

本件の六本木店にも、その雰囲気を踏襲したデザインが求められた。

しかし、六本木のテナントは新築RC造のビルの一室であり、
古民家特有の歴史を内包したアンティーク感を
新しい建材料でつくりこむという、
矛盾した作業が必要とされた。

つまり今回の内装は、
「古さを、新しさでつくる」
という非常に高度なテーマを内包していました。


アンティーク調の和空間は「真似る」のではなく「構造から考える」

アンティーク調の内装というと、
・古材を貼る
・色味を暗くする
・装飾を増やす

といった表層的なアプローチを想像しがちです。

しかし、それだけでは
“雰囲気だけ似ている空間”になってしまいます。

小嶋が重視したのは、
古民家の「見た目」ではなく、
構造や考え方そのものでした。

そこでアンティークな古い木造のしつらえに近づけるため、
経年変化を楽しめる素材を細心の注意をはらいながら選定し、
古民家の木躯体の組み方を参考に、
ディテールを検討しながら設計をおこなった。

そこに年代物のアンティーク調度品を混ぜ合わせながら、
これから長く愛される空間を創造した。

ここで重要なのは、
完成した瞬間がピークではないという考え方です。

時間が経つほどに味わいが増し、
使い込まれることで完成度が上がっていく。

それこそが、
坐離宮らしい空間づくりの本質でした。


飲食店内装で「和」を表現するときに重要な3つの視点

① 素材は「今きれい」より「5年後どう見えるか」

和の空間、アンティーク調の内装では、
素材選びが空間の寿命を大きく左右します。

新品のときは美しくても、
数年で劣化が目立つ素材では意味がありません。

今回の内装では、

  • 経年変化を楽しめる木材

  • 表情が育つ左官仕上げ

  • 使い込まれることで深みが増す金物

など、
時間とともに価値が上がる素材を中心に構成しています。


② 建具・造作は既製品に頼らない

坐離宮 六本木店では、
建具に既製品を使わず、すべて製作対応としています。

これはコストだけを見れば、
決して効率の良い選択ではありません。

しかし、

  • 空間全体のバランス

  • 細部の寸法感

  • 素材同士の相性

を突き詰めるためには、
造作という選択が不可欠でした。

結果として、
どこを切り取っても違和感のない、
統一感のある空間が生まれています。


③ 照明は「明るさ」ではなく「余白をつくる」

飲食店内装において、
照明はつい「明るさ」や「見やすさ」だけで判断されがちです。

しかし本来、照明は
空間の温度を決める要素でもあります。

坐離宮 六本木店では、

  • 影をつくる

  • 明暗のグラデーションをつくる

  • 視線を自然に落ち着かせる

ことを意識した照明計画がなされています。

その結果、
都会の真ん中にありながら、
どこか懐かしく、落ち着いた時間が流れる空間が完成しました。


六本木という立地だからこそ「派手さ」を選ばなかった理由

六本木と聞くと、

  • 高級感

  • 派手さ

  • 非日常感

を前面に出した内装を想像する方も多いと思います。

しかし、
坐離宮が目指したのは真逆でした。

  • ゆっくり食事を楽しめる

  • 会話が自然に深まる

  • 大切な人と静かな時間を過ごせる

そんな「引き算の空間」です。

結果として、

  • 接待

  • 記念日

  • 家族との食事

など、
幅広いシーンで選ばれる店となっています。


内装は「完成」ではなく「スタート」

今回の内装づくりで一貫していたのは、
完成した瞬間だけをゴールにしないという姿勢です。

時間が経つほどに馴染み、
使い込まれるほどに魅力が増していく。

それは、
内装を「消耗品」ではなく
経営資産として捉えているからこそ可能になります。


飲食店内装を検討している経営者の方へ

飲食店の内装は、

  • 目立てばいい

  • 流行っていればいい

  • とにかく安く

という判断軸だけでは、
長期的に見てリスクが高くなります。

誰に、どんな時間を過ごしてもらいたいのか。
そのために、空間は何を語るべきか。

この視点から逆算して考えることが、
結果的に「強い店」をつくる近道になります。

本記事で紹介した坐離宮 六本木店の空間は、
デザイナー・小嶋 健志郎の設計思想と、
現場でそれを丁寧に形にした施工によって実現しました。

アンティーク調の和空間、
時間が積み重なる飲食店内装にご興味のある方は、
ぜひデザイナーページもあわせてご覧ください。


▶︎ デザイナープロフィールはこちら