「居心地」を数値化する店舗設計の科学:リピート率を最大化する視線・照明・寸法のロジック
「居心地がいい」を数値化する。デザイナーが空間設計で最初に行う「言語化」の作業
「この店、なんだか居心地がいいな」と感じる場所がある一方で、
「おしゃれだけれど、なぜかソワソワして落ち着かない」という空間も存在します。
店舗オーナーや開業を控えた方の多くは、これを「デザイナーのセンス」や「客層との相性」という曖昧な言葉で片付けてしまいがちです。
しかし、プロの店舗デザインの世界において、「居心地」とは100%計算で再現可能な「数値」の集合体です。
私たちODG(Overwhelming Design Group)が、設計図を前にして最初に行うのは、美しいパースを描くことではありません。
その空間を訪れる人の「感情の動き」を、数センチ、数ケルビン、数デシベルという単位で徹底的にロジックへ落とし込む作業です。
本稿では、美容サロン、飲食店、クリニックなど、あらゆる空間においてリピート率とLTV(顧客生涯価値)を左右する「居心地の数値化」の裏側を、専門的な視点で徹底解説します。
なぜ「おしゃれなのに疲れる店」が生まれてしまうのか?
SNS映えする内装の店舗が増える一方で、滞在時間が短く、リピートに繋がらない店舗が散見されます。
その最大の原因は、デザインが「視覚(ビジュアル)」にのみ偏り、「身体感覚(UX:ユーザー体験)」が設計されていないことにあります。
ビジュアルと身体感覚の乖離
店舗経営において、SNSを通じた「初動の集客」はビジュアルの力で作ることが可能です。
しかし、店舗の存続を支える「リピート率」は、滞在中のストレスの有無、つまり目に見えない身体感覚によって決定されます。
UX(ユーザー体験)を数値で定義する
私たちは設計をスタートする際、まずその空間のUXを以下の4つの軸で数値化します。
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視覚的ストレスの排除: 視線の衝突を避けるレイアウト。
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生体リズムの制御: 適切な照度と色温度による心理的誘導。
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人間工学的適合: 身体に負担をかけない家具の寸法設計。
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環境制御: 音響、空調、嗅覚に訴えるノイズの遮断。
かっこいい壁を作る前に、「顧客がその椅子に座り、何を見て、どう動くか」という一連の流れに1mmのストレスも与えないための計算が必要なのです。
【視線の設計】15cmの差が「安心感」と「気まずさ」を分ける
飲食店やサロンにおいて、最も多い不快感は「隣の席の人や、忙しそうに動くスタッフと頻繁に目が合う」というものです。これを防ぐのが、徹底的な視点シミュレーションです。
垂直方向の視線管理
人間が最もリラックスしている時の視線の高さは、姿勢によって数センチ単位で変化します。
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着席時の視点(リラックス): 床から約110cm〜120cm。
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スタッフの視点(立位・動作): 床から約150cm〜160cm。
この40cmの差をどうデザインするかが鍵となります。
例えば、パーテーションや什器の高さを「135cm」に設定した場合、座っている顧客からは周囲が見えず隠れ家感が強まり、立っているスタッフからは空間全体の状況が把握できるという「管理とプライバシーの両立」が可能になります。
反対に、あえて「105cm」に抑えれば、開放感と活気を演出できます。
このわずか15cm〜30cmの判断が、空間の「性格」を決定づけるのです。
【照明の科学】客単価と滞在時間をコントロールする数値
照明は単なる「明かり」ではありません。顧客のバイオリズムを制御し、提供するサービスの付加価値を最大化するための精密なデバイスです。
ケルビン(色温度)による心理的影響
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2700K〜3000K(電球色): 副交感神経を優位にし、心拍数を落ち着かせます。高級レストランやサロンの待合室、バーなど、滞在時間を延ばし客単価を上げたい空間に最適です。
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5000K(昼白色): 覚醒効果があり、集中力を高めます。クリニックの診察室、カウンセリングルーム、物販エリアなど、正確な判断や清潔感が必要な場所に配置します。
Ra(演色性)の落とし穴
「料理が美味しそうに見えない」「サロンで仕上げた髪の色が、屋外に出ると違って見える」という問題は、この演色性の設計ミスです。
ODGでは、平均演色評価数(Ra)が90以上の高演色LEDを採用し、商材が最も魅力的に映る光の質を、科学的な根拠に基づき選定します。
【1cmのホスピタリティ】「差尺(さしゃく)」の黄金比
家具選びにおいて、デザイン性以上に重要なのが「差尺(さしゃく)」、つまり「椅子の座面」と「テーブルの天板」の高さの差です。
この数値が数センチ狂うだけで、顧客は無意識に不快感を覚えます。
用途別の最適数値
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食事に最適な差尺: 27cm〜30cm(自然な前傾姿勢が保てる)。
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PC作業・筆記に最適な差尺: 23cm〜25cm(肩が上がらず、腕を自然に置ける)。
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ラウンジ・リラックス: 20cm以下(低めのソファで、身体を預ける姿勢)。
デザイン性だけで海外ブランドの家具を選んでしまうと、日本の標準的な体格には差尺が合わず、「腰が痛い」「肩が凝る」という身体的ストレスを生みます。
これが「なぜかもう一度行きたくない」というリピート阻害要因の正体です。
【音と空気】目に見えない「ノイズ」をデザインする
情報の感度が高い現代の顧客は、空間の「音」や「空気」に非常に敏感です。
音響のマスキングと吸音設計
壁材が硬すぎる(コンクリートやガラスのみ)と、話し声が反響して「ガヤガヤ」とした不快なノイズになります。
ODGでは、デザインを損なわない形で吸音材を配置し、隣の席の会話は適度に遮断しつつ、自分たちの会話は明瞭に聞こえる「音響の明瞭度」を計算します。
空調の気流設計
どんなに豪華な内装でも、エアコンの風が顔や身体に直接当たる席は「ハズレ席」となり、顧客満足度は著しく低下します。
吹き出し口の角度、ルーバーの設置、サーキュレーションによる温度の均一化を設計段階で盛り込むことが、滞在時間を延ばすための必須条件です。
数値化するからこそ、デザイナー指名制が「経営」に効く
「居心地」をここまでロジカルに語る理由は、店舗内装を「ただの装飾」ではなく「経営を支えるインフラ(装置)」だと考えているからです。
このロジックをベースにしながらも、その上に載せる「情緒的な価値」や「ブランディング」は、デザイナーの得意領域によって異なります。
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圧倒的なラグジュアリーを数値で構築するスペシャリスト。
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機能美とミニマリズムをミリ単位で突き詰めるエキスパート。
顧客が求める「理想の収益モデル」に最も近いロジックを持つデザイナーをアサインすることで、ODGの空間は「見た目の美しさ」と「経営数値の向上」を両立させることが可能なのです。
まとめ:居心地とは、徹底的な「おもてなし」のロジックである
居心地が良い空間には、一見すると魔法がかかっているように見えます。
しかし、その魔法の正体は、デザイナーが積み重ねた膨大な「数値」と、顧客に対する深い「配慮」の結晶です。
「なんとなく」のセンスに頼るのではなく、顧客が過ごす1分1秒を科学する。
その執着とも言えるこだわりが、数年後に「選ばれ続ける店」と「淘汰される店」の決定的な差を生みます。
あなたの理想とする空間を、曖昧なイメージのまま終わらせない。
数値と情熱で、確実に収益化へと導く。それがODGの約束です。